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【お知らせ】「人」明日へのストーリー「ペルーで出会った愛しい人々との時間」[愛媛県]
2023.03.09
2019年度1次隊/ペルー/コミュニティ開発
玉木 冴子(愛媛県)
【ペルーへ行くまで】
JICA海外協力隊への憧れを抱いたのは、小学生の頃でした。テレビで、遠い海外の地で幼い子供達に「自然を守ることの大切さ」を熱心に教えている協力隊員の姿を観て、「かっこいい!」と思ったのを今でも覚えています。動物が好きだった私は環境保全に興味があったので、中学生になる頃には「JICA海外協力隊の環境教育隊員になる!」というのが夢の一つでした。そこから紆余曲折を経て大学院卒業後、新卒で食品会社へ入社しました。入社後5年間、コーヒーをはじめとする飲料の研究開発に従事していました。
元々海外にも興味があったので、ワーキングホリデーへ行くか留学するか、なんて考えていたそんな折、社内の広報で「JICA海外協力隊(民間連携)」制度があることを知ります。これまでの仕事経験を活かして海外協力隊活動に参加できると知り、迷わず応募しました。そのあとは無事に社内選考を通過し、派遣先・派遣時期が決定、現地でコーヒーの仕事をしたいという希望も叶い、ペルーのコーヒー産地(カカオの産地しても有名)へ赴任することになったのです。
【コーヒー・カカオ農園に通う日々】
ペルーでの活動は、とても貴重で楽しいものでした。私の使命は赴任した町のコーヒー・カカオを有名にすること(主にマーケティング活動)でしたが、いざ赴任先へ行ってみると、協業するはずだった同僚が前日に辞め、同じ分野を担当する同僚が不在という状況に。まずは農家の方々と知り合うことが必要ということで、職員の家族や親戚を紹介してもらったり、1件1件突撃お宅訪問をしたりして、徐々に現地の知り合いを増やしました。
半年もすれば農家の知り合いも増え、カカオやコーヒーの収穫時期にはほぼ毎日畑を訪れていました。こちらが何かを教えるというよりも、むしろ教えてもらうことの方が多かったです。どうやってコーヒーやカカオの品質を向上させようか、どうやってもっと買い手を増やそうか。農家や配属先の方々、近隣の大きな市から来てもらった農業技師の方々とあれこれ試案する日々でした。
一度、午前3時から始まるコーヒー収穫へ同行するために、ホームステイ先の家から遠く離れたコーヒー農家さんの家へ泊まり込んだことがありました。ホームステイ先のママにとても心配されたのは、今ではいい思い出です。
「高品質なコーヒー作りを覚えて現地の農家さんに共有しよう」と思い、ペルーでコーヒー作りをする日本人農家さんのお家に泊まらせてもらい、様々なことを教えて頂いたこともありました。この日本人農家さんを紹介してくれたのは、先輩協力隊員です。人と人とのつながりから活動が拓けていくことも、海外協力隊の醍醐味だと思います。
【家族と、仲間と、町の人と】
せっかくなので、海外協力隊活動以外のことも紹介したいと思います。私が赴任していた町は、アマゾン川上流に位置する人口3,000人程度の小さな町(サンマルティン州モヨバンバ郡カルサダ町)で、町を歩けば顔見知りばかりです。町の9割以上が農業従事者で、川で釣った魚や家で飼っている鶏を自分たちで捌いて食べます。皆、日が落ちる前に仕事を終え、日が暮れるまで家の前に椅子を並べ、その日あったことを語り合います。直前まで生きていた鶏肉の新鮮でおいしいこと!夕暮れに家族で何時間もだらだら談笑することの楽しいこと楽しいこと!ペルーの田舎町で過ごした時間は、私の人生の中でも経験したことのない、尊くて豊かな時間でした。
ゆったりした時間も最高でしたが、ペルーのダンス文化もすごく好きでした。南米はダンスがさかんなイメージがありますが、ペルーも踊る機会が多いです。家族で普通に夕食を取る時、誕生日パーティー、職場の忘年会。ひとしきり食事を終えたら椅子をぐるりと並べ、クンビア、サルサ、メレンゲなどのラテンミュージックを爆音で流しながら踊ります。男女だけでなく友達同士、親兄弟姉妹同士でも踊ります。一緒に踊ると、特に言葉を交わさなくてもあっという間に仲良くなれるのが不思議です。町全体のお祭りなどで、大勢の老若男女が音楽で一つになる光景は圧巻でした。
【仲間に教えてもらった大切なこと】
活動を通して出会った仲間が言った、今でも忘れられない一言があります。それは、「土から頂いたものは、全て土へ還す。これが、私たちが農業をする上での基本だよ。」という言葉。コーヒー農園で農業技師として働いていた仲間の言葉です。コーヒーの生産効率を上げるのであれば、化学肥料を使えば、安く簡単に収量がアップします。しかし、私が接した現地のコーヒー農家さんの中には、“農作物は大地から、自然から頂いている”という考えが根付いている方が多くいました。手間がかかっても、自然に優しい、古来の育て方を守る。そんな考えで育てられた希少で高価値なコーヒーが、確かにありました。
私は民間連携制度での派遣だったので1年間の派遣予定でしたが、延長申請をして「約2年ペルーにいられることになりそう!しかもこれからまさにコーヒー収穫期!」という時、コロナ感染拡大により緊急帰国することになりました。ペルーは外出制限が厳しく、日本に帰国するまで約1か月間の自宅待機期間がありました。農家の方々は収穫時期真っ盛りなコーヒーの収穫や管理もできず、悔しい日々を過ごしているとメッセージをくれました。途中で活動を終えなければいけないこと、充分な心の準備もお世話になった方々へのお礼も出来ないままの帰国は、仕方ない状況とは言えとても寂しいものでした。
【帰国してからと、これから】
緊急帰国してから再渡航はかなわぬまま、私は協力隊としての活動期限を終えました。そのまま派遣前に働いていた食品企業へ戻りましたが、現地の仲間が言った「土から頂いたものは土へ還すもの」という言葉が忘れられなかったこと、元々ずっとやりたかった環境分野にどっぷり浸かりたくなり、最終的に「ものを作る」側(メーカーなど)から「ものを循環させる」側(廃棄物処理業界やリサイクル業界)へいきたいと思うようになりました。
結局、帰国1年後に環境コンサルタントへ転職し、早いものでもう2年経ちます。今は新しい分野に四苦八苦しながらも、常に自分のやりたい分野について頭を悩ませられる環境に大いに満足、感謝しています。「資源循環」と「海外での課題解決」は、今私の中で一番興味のあるテーマです。どちらも昔から興味があったテーマですが、自分の中でしっかり軸ができたのは協力隊経験のおかげです。挑戦の場を与えてくださった前職、活動に際しお世話になった方々に心から感謝します。そして今後、今いる業界をより大きくしていけるよう、挑戦を続けます。
昨年8月、ホームステイしていた家のママが不慮の事故で亡くなった報せを受けました。緊急帰国で突然お別れして以来会えないまま、永遠のお別れになってしまいました。とても悲しくて寂しいですが、「ペルーへ貢献できる仕事をして、いつかママのお墓へ報告に行きたい」と、そのために毎日必死に「頑張ろう」と決意している今日この頃です。
【詳細】
独立行政法人国際協力機構ホームページ>JICA四国>「人」明日へのストーリー>ペルーで出会った愛しい人々との時間
https://www.jica.go.jp/shikoku/story/151.html
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えひめグローバルネットワークは、令和4年度外務省NGO相談員事業を受託しています。
http://www.egn.or.jp/ngo/ngo.html
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